支払督促 – 売掛金回収・未回収の分かれ道(第5回)

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こんにちは。アラームボックス取締役審査部長の高見です。「売掛金回収と未回収の分かれ道」第5回の今回は、支払督促に関するお話です。売掛金の回収のための有効な手段なので、しっかり理解を深めていきましょう。

支払督促について

まずは支払督促の基本内容について知っておきましょう。

支払督促とは?

支払督促とは、売掛金などの回収が難しい場合に、簡易裁判所に申立てることで簡易裁判所の書記官名で、支払の命令を出してもらえる制度です。相手からから異議申し立てがなければ、裁判の判決と同様の法的効果が発生します。

売掛金が回収できないときの支払督促の手続きと流れ

みなさんの会社の取引相手方から約定の支払日に売掛金が支払われず、電話等で催促をしても確たる返答がない場合、内容証明郵便による催告等を省略して裁判上の手続に進んでもよいと前回申し上げました。裁判上の手続としていろいろなものが用意されていますが、もっともよく利用されるのは支払督促です。

通常の訴訟手続の場合、訴訟の目的の価額が140万円を超えるか否かによって地方裁判所と簡易裁判所のどちらが管轄するか定まりますが(※1)、支払督促は売掛債権額の多寡に関わらず(たとえ1億円であっても)簡易裁判所に申し立てます(※2)。裁判所のホームページ等に支払督促の申立書の書式例がありますので、弁護士や司法書士に依頼するまでもなく、みなさんが自ら手続を行うことは難しくありません。支払督促の申立ては郵送でもできます。申立書の記載事項に不備がなければ簡裁から債務者に対して支払督促が発せられます。

支払督促の効果と注意事項

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支払督促の効果(仮執行宣言)

支払督促は「特別送達」と記載された裁判所名入りの特別な郵便によって送付されますので(※3)、内容証明郵便程度では何とも思わない債務者(取引先)であっても怯むことが多いようです。電話等での売掛金の回収交渉では埒が明かないようなケースでは一定の効果が期待できます。そして、債務者(取引先)から異議の申立てがなければ、最終的に仮執行宣言が付され(※4)、それによって差押え等の強制執行が可能になります。

支払督促の注意事項(管轄簡易裁判所)

ところで、支払督促は債務者(取引先)の所在地を管轄する簡易裁判所の専属管轄とされています(※2)。例えば、取引先が大阪市にある場合、大阪簡易裁判所に申し立てることとなります。支払督促に対して債務者(取引先)から異議の申立てがあると通常の訴訟に移行し、訴訟の目的の価額(140万円を超えるか否か)によって大阪簡易裁判所または大阪地方裁判所に訴訟係属となります(※5)。売掛金などの債権者であるみなさんの会社が東京都新宿区にあれば、東京簡易裁判所または東京地方裁判所への移送の申立てをする方法も考えられますが、認められるかどうかわかりません。

上述したとおり、支払督促の重大な注意点は、取引先から異議申し立てがあると通常の訴訟に移行し、取引先所在地の管轄裁判所で裁判が行われる点です。

簡易裁判所の訴訟では会社の従業員等を訴訟代理人とすることができ(※6)、また最初の口頭弁論期日だけでなく、その後の口頭弁論期日でもいわゆる擬制陳述が認められていますので、事前に準備書面を提出しておけば欠席扱いにはなりません(※7)。しかし、地方裁判所に係属する場合、弁護士を訴訟代理人とする必要があり、また簡裁のように第2回目以降の口頭弁論期日における擬制陳述も認められていません。

口頭弁論自体はごく短時間で終わるのが普通ですが、とりあえず裁判所に出頭しなければなりません。遠隔地であれば弁護士の日当や旅費を負担する必要もあります。もし東京に会社がある場合、大阪などで訴訟係属となることは総じて不利です。

支払督促以外の選択肢も検討

そのように考えると、支払督促の方法によらず、初めから東京簡裁または東京地裁に通常の訴えを提起する方がよいという判断もあります。みなさんが大阪にあるA社との取引開始にあたり交わした基本契約書のなかで第1審の管轄裁判所を東京と定めている場合(※8)はもちろん、そのような定めがなくとも、みなさんの会社が売掛金の債権者でA社が債務者であるため民法上、管轄裁判所は債権者の所在地がある東京となります(※9)。

支払督促も万能ではありません。売掛金の回収にあたっての手段のひとつと捉え、相手方から異議を申し立てられる可能性や、申し立てられた後の対応も検討したうえで、有効に活用しましょう。

次回の売掛金回収・未回収の分かれ道は最終回「まとめ」

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。少しだけお知らせです。

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※1 裁判所法 第33条第1項第1号
※2 民事訴訟法 第383条第1項
※3 郵便法 第49条
※4 民事訴訟法 第391条
※5 民事訴訟法 第395条便法
※6 民事訴訟法 第54条第1項ただし書
※7 民事訴訟法 第277条
※8 民事訴訟法 第11条
※9 民事訴訟法 第5条第1号

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