行政処分とは

新規取引先の企業調査などで、調査対象の企業が行政処分を受けていることがあります。行政処分とはどのようなものなのでしょうか?行政処分について解説します。

目次

  1. 1.行政処分と行政指導
    1. 1.行政処分とは
    2. 2.行政指導とは
  2. 2.国土交通省による行政処分の公表事例
    1. 1.健康状態の把握義務違反に対する行政処分
    2. 2.点呼の実施義務違反での行政処分
    3. 3.乗務等の記録事項義務違反での行政処分
    4. 4.運行記録計の装着義務違反での行政処分
    5. 5.運転者に対する指導監督違反での行政処分
    6. 6.高齢運転者に対する指導監督違反での行政処分
  3. 3.消費者庁による行政処分の公表事例
    1. 1.業者が勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘する目的であること」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知しない場合
    2. 2.不用品買取などの「押し買い」での行政処分
    3. 3.誇大広告・不当表示・優良誤認・有利誤認での行政処分
    4. 4.原野商法に対する行政処分
    5. 5.インターネット通販(通信販売業者)に対する処分
    6. 6.特定電子メール法に係る措置命令
    7. 7.連鎖販売業者に対する処分

行政処分と行政指導

行政処分とは

行政処分とは、行政機関が法律に基づいて、個人や法人に対して「権利を制限する」「権利を与える」「義務を課す」ことです。許認可の意味合いもありますが、「処分」という言葉の響きから、悪質な行為に対する注意や罰則に使われることが一般的です。
行政処分を行う機関としては、国土交通省や消費者庁、警察庁、金融庁などの国の行政機関の他、県知事などが行う行政処分もあります。事例によって処分内容は様々で、「一定期間の入札停止」だったり「数日間の営業停止」「免許のはく奪」などがあります。 下された行政処分には強制力があり、処分を無視して営業を続けたりすると刑事罰などに問われる可能性があります。

行政指導とは

行政処分に対して「行政指導」は法的な強制力がなく、法令に対する根拠を必要としないとされます。行政指導は任意であり、不服である場合には従う必要はありません。
行政処分が「命令」であるのに対し「行政指導」の内容は「助言、指導、勧告」です。ただし、行政処分の前の「警告」である可能性もあり十分に注意が必要です。

行政手続法 第32条、第32条、第33条、第34条、第35条、第36条

国土交通省による行政処分の公表事例

国土交通省は、バス、タクシー、トラックを利用する際の事業者選択の参考情報として、利用者利便の確保と事業の健全化、安全確保のために過去3年間の自動車運送事業者に対する行政処分を公表しています。 よくある処分の例をまとめました。

健康状態の把握義務違反に対する行政処分

事業用自動車を利用する事業者は、労働安全衛生法に基づいて、運転者に対して「雇用時」「定期的に」健康診断を行う義務があります。 また、健康診断の結果をもとに、経過観察や医師の診断を受けさせることや、医師から乗務に係る意見を聴取する義務があります。

健康状態の把握義務違反での行政処分
健康診断未受験者1名 警告
健康診断未受験者2名 20日車
健康診断未受験者3名以上 40日車

貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第6項

点呼の実施義務違反での行政処分

貨物運送事業者は、対面での点呼を行うことが義務付けられています。また、点呼の内容や記録する事項も決められていて、乗務前点呼と乗務終了後点呼が必要です。 点呼では酒気帯びの有無、疾病・疲労の状況を確認しなければなりません。

点呼の実施違反(貨物自動車)
違反行為 初違反 再違反
未実施 未実施19件以下 警告 10日車
未実施20件以上49件以下 10日車 20日車
未実施50件以上 20日車 40日車
不適切 一部実施不適切 警告 10日車
全て実施不適切 10日車 20日車

旅客自動車運送事業運輸規則第24条
旅客自動車運送事業運輸規則第48条第1項第6号
旅客自動車運送事業運輸規則第50条第1項第2号
貨物自動車運送事業輸送安全規則第20条第1項第8号
貨物自動車運送事業輸送安全規則7条
貨物自動車運送事業輸送安全規則17条第3項

乗務等の記録事項義務違反での行政処分

運転日報

乗務員の乗務状態のチェックや過労、過積載の防止のために、運転日報の記録が義務付けられています。

運行指示書

2泊3日以上の運行予定がある場合は、点呼の代わりに運行指示書を作成し、乗務員に携行させなければなりません。

タコチャート紙

旅客輸送に関わる事業者はタコグラフ設置と保存がおおむね義務化されています。

貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条第1項
貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条第3項

運行記録計の装着義務違反での行政処分

貨物運送事業者において、指定の重量のトラックに対して運行記録計(タコグラフ)の装着が義務付けられています。

貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条

運転者に対する指導監督違反での行政処分

貨物運送事業者において、事業者は、安全運呼応に必要な技能と知識を習得させる責務があります。また、安全教育計画表と議事録(日付・場所・乗務員の名前・指導者の名前と直筆のサイン)を作成して3年間保存しなければなりません。

貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第1項

高齢運転者に対する指導監督違反での行政処分

貨物運送事業者において、事業者は、65歳以上のドライバーに対して「適性診断(適齢診断)」と「教育指導」を行う責務があります。具体的には、65歳になってから1年以内、その後3年以内に1回受ける必要があります。

点呼の実施違反(貨物自動車)
初回受診日 初回受診日以降
貨物 65歳に達した日から1年以内に1回 3年毎に1回
旅客(個人タクシー以外) 65歳に達した日から1年以内に1回 75歳に達するまで3年に1回、75歳以降は1年以内に1回
個人タクシー 65歳に達した日から1年以内に1回 3年毎に1回

独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)

貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条第2項

消費者庁による行政処分の公表事例

消費者庁は、「特定商取引法に基づく措置等」「景品表示法に基づく措置等」の2種類の項目で行政処分の状況を公表しています。よくある処分の例をまとめました。

業者が勧誘に先立って「業者の名称」「勧誘する目的であること」「勧誘する商品・役務・権利の種類」3つの事項を告知しない場合

訪問販売や電話勧誘販売、キャッチセールスなどは、「業者の名前」「勧誘する(営業する)目的であること」「勧誘する商品やサービスの種類」を「勧誘に先立って」告知する義務があります。
勧誘目的であることを隠して近づき、商品を購入させることは処分の対象となります。例えば訪問販売であればインターホンを通じて最初に話す際にはこの三項目を告げなければならず、「水道の点検にきました」と告げて浄水器を売るようなことがあればこれは違犯になります。

行政処分の対象となりうる勧誘
訪問販売 水道の点検に来た 浄水器などを販売目的
訪問販売 屋根や床下の点検 外壁塗装や防虫駆除の販売目的
電話勧誘販売 体調はどうですか 健康食品の販売

特定商取引法第3条
特定商取引法第16条

不用品買取などの「押し買い」での行政処分

訪問販売などで特定商取引法に違反して商品を売りつけると処分の対象になりますが、訪問したうえで貴金属や古本、中古車などの買取を強要した場合も処分の対象となります。 訪問販売と同様に、業者であることを隠して勧誘したり、断っても買取させるまで居座ったりすることは処分の対象になります。また、買取に対してもクーリング・オフ制度は有効です。

特定商取引法第58条の6第1項 不招請勧誘の禁止 など

誇大広告・不当表示・優良誤認・有利誤認での行政処分

宣伝内容に対して商品が実際に機能を有していなかった場合、処分の対象になります。宣伝のメディアはチラシ、テレビやラジオ放送、新聞や雑誌、インターネットの他、説明書面や口頭などでも処分の対象になります。

処分の対象となる例
優良誤認
99%殺菌 実際には除菌効果がなかった
有効成分〇〇40%含有 当該成分が1%しか含まれていなかった
天然温泉 実際には沸かした水道水だった
30km/1lの低燃費 実際には燃費性能が低かった
有利誤認
〇〇日までのお買い得 実際には常に同じ値段だった
〇〇円OFF 実際には10個以上購入しないと割引にならなかった
メーカー希望小売価格から30%OFF 実際には自社で製造していた(二重価格表示)
不実証広告規制
業界最速インターネット 根拠なし
シェアNo.1 根拠なし
ダイエット食品〇〇を体験したAさんは××kgの減量に成功 体験談が事実なし
打ち消し表示
通話料0円 「午後9時から午前1時までは通話料がかかります」と打ち消し表示
〇〇駅まで1時間 「乗換時間を含みません」と打ち消し表示

原野商法に対する行政処分

価値の低い土地や山林を「道路や駅ができる」「太陽光発電に向いている」「民泊に利用できる」などと言って将来価値が上がるかのように見せかけ、高値で売る商法です。 中には「土地を高値で購入するが、税金対策のためいったん別の土地を買ってほしい」として行方をくらましたり、「土地を調査する」として費用を請求して払い込むと連絡が途絶えるケースなど、二次被害的なトラブルもあります。

インターネット通販(通信販売業者)に対する処分

現在ではどの事業者でも簡単に始められるようになったインターネット通販ですが、法律に違反している場合には当然処分の対象となります。

通信販売業者が処分の対象となる例
代表者名が虚偽 販売業者の氏名又は名称の表示義務違反
電話番号が嘘 販売業者の電話番号の表示義務違反
キャンセルに応じない、遅い 売買契約の解除によって生ずる債務の履行の不当な遅延

特定電子メール法に係る措置命令

「特定電子メール(営利団体または営業を営む個人)」を送信する際には、受信者の同意を得なければなりません。

連鎖販売業者に対する処分

個人を販売員として勧誘し、その個人にさらに他の販売員を勧誘させていくことで連鎖的に組織を拡大して商品を取引すること。連鎖販売自体は禁止されていませんが、規則が課せられています。