海外企業との取引で最初の難関となりえるのが、企業の信用調査です。
日頃与信管理を担当している方でも、政情や文化が異なる海外企業の与信管理には大きなハードルを感じるのではないでしょうか。
近年はグローバル化により市場は大きな広がりを見せ、昔よりも海外進出や仕入れルートの拡大を考える企業は多くなりました。しかし、現地での取引先を安易に決めてしまうと、売掛金の未回収や反社会勢力との関わりなど、大きなリスクを負ってしまう可能性があります。取引前にきちんと企業の信用調査を行いたいところですが、環境が異なれば調べ方も大きく異なるものです。
今回は海外企業との取引を考えている方に、海外企業調査についての基礎知識やおすすめの方法について解説していきます。
目次
海外企業調査(海外企業信用調査)について
海外企業調査とは?
海外企業調査とは、その名の通り「海外の企業の信用調査を行う」ことです。
信用調査は与信調査とも言われ、その企業が取引先にふさわしい会社か判断するために、支払い能力や不祥事の有無、業界での立ち位置など様々な情報を集めることを言います。海外企業調査の場合は、現地事情もふまえた判断が必要なため、現地のビジネス環境についての知識も必要となるでしょう。
海外企業の信用調査や与信管理が必要な理由
信用調査や与信管理にはコストや手間がかかります。海外企業を対象とした場合その負担は更に大きくなるのに、なぜ信用調査や与信管理が必要なのでしょうか。それには下記の3つの理由が挙げられます。
1.売掛金の未回収など金銭的なリスクもし商品を納品した先の企業の財務状況が悪く、代金をもらう前に倒産してしまえば、売掛金の未回収が発生します。また、倒産だけでなく、実態が見えにくい海外だからこそ、納品先に会社が存在せず商品が持ち逃げされるなどの詐欺による金銭の損失にも注意しなくてはなりません。
2.仕入れ先の倒産など事業継続に関するリスク
海外企業の仕入れ先を開拓し、そこからの供給を前提とした商品を製造していたとします。もし仕入先の企業が倒産してしまった場合、代わりの企業をすぐに見つけられなければ、その商品の製造そのものが難しくなってしまいます。継続的な取引が発生する企業に対しては、取引開始前の信用調査はもちろん、継続的な与信管理も大切です。
3.会社の信頼性に関するリスク
売掛金の未回収が発生した、ということが他社に知られてしまうと「あの企業は今損失がでているらしいけど資金繰りは大丈夫なのか」と、自社の支払い能力の評価が下がってしまうことがあります。また、海外企業の取引先に、万が一でも反社会勢力に関わる企業を選んでしまうと、会社の対外的信用を下げてしまうことになります。
海外企業の調査方法と信用調査レポートの選び方
海外企業の調べ方
それでは実際に海外企業調査には、どんな方法があるのでしょうか。
1.自分で調べる
今はネットで世界中の情報を探すことができるので、与信管理の担当者が自ら調査することも可能です。企業のホームページやオンラインで取得できる企業情報などの公開情報はチェックしましょう。また、相手企業の担当者にヒアリングを行うことも有効な手段です。担当者から聞きだした内容を公開情報と照らし合わせ、内容に相違なければ正確な情報を伝えてくれる信頼のおける企業であることがわかります。
ただし、どれも日本語で提供されることは少なく、ビジネスレベルの語学力と与信管理の知識を必要とします。
また、自社で発信する情報以外にも、格付け機関の情報や登記などの公的な登録情報といった客観的な情報も取得したいところですが、現地の機関へ問い合わせが必要なため、海外企業調査のできる信用調査会社に依頼したほうが効率的に情報を得ることができます。
2.レポートを購入する
海外企業調査のもう一つの手段が、海外企業調査ができる信用調査会社からレポートを購入する方法です。
与信管理の専門家による調査が行われているため、信頼のできる情報を得ることができます。コストはかかりますが、自社で調査を行った場合の手間や正確性を比較して、必要であれば依頼することをお勧めします。
信用調査レポートの選定ポイント
レポートを購入できる信用調査会社はいくつかありますが、選び方のポイントについて解説していきます。
1.利用地域
信用調査会社ごとに対応しているエリアが異なります。また、エリアごとに得意不得意もありますので、取引を考えている企業の営業エリアをふまえて、調査を得意としている信用調査会社に依頼するといいでしょう。
2.情報量や品質
聞き取り調査の有無や、情報の新鮮度など、レポート内容は会社により様々です。日本語ではなく英語で提供されるものもありますので、サービス内容やサンプルを事前に確認したうえで利用しましょう。
3.料金
海外企業との取引で発生しうる金額に見合った料金のレポートを購入しましょう。料金が安いに越したことはないとはいえ、レポートの内容が違えば、料金も変わってきます。レポートの内容がカスタマイズできる会社や、和訳が別料金の会社もありますので、都度見積もりをとることをおすすめします。
4.納期
調査先のエリアによっても異なり、7営業日~30営業日程度かかることが多いです。追加料金はかかりますが納期を融通してくれる場合もありますので、取引を始めたい期日が迫っている場合は確認してみるといいでしょう。
海外企業調査会社のおすすめレポート3選
信用交換所「海外企業信用調査 統一評価レポート」
「海外企業信用調査レポート&コンプライアンスチェック」の特徴は、全世界をカバーする調査会社に加え、地域専門の調査会社とも個別に提携し、各々のニーズにマッチした信用調査を行える点です。調査先のエリアや求めるレポート内容によって、提携調査会社を選ぶことができるため、より正確に求める情報を得ることができます。
【選択できる調査会社】
全世界:「CRIF社」「ACP社」
中国 :「GladTrust社」「KASE社(嘉世総研)」
香港 :「Verona社」
調査先のエリアによっては、日本文・英文・中文の翻訳や急ぎの速度指定(最短1~2営業日)が可能な場合もあります。
参考:信用交換所
東京商工リサーチ「 D&Bレポート(海外企業情報調査レポート)」
米国大手企業情報サービス会社Dun & Bradstreet(D&B)の国内総代理店として、東京商工リサーチが提供するのが「D&Bレポート」です。「D&Bレポート」は世界でもっとも有名な海外企業調査レポートとも言われています。レポート内容によって3種類のレポートを選ぶことができ、企業の調査だけでなく、国別のリスク要因を分析した資料なども購入することができます。
ただし、東京商工リサーチの提供する「tsr-van2」の契約が無い場合は、別途代行処理料金がかかるため注意が必要です。
参考:東京商工リサーチ
エクスペリアン「海外企業調査レポート」
アイルランドに本社を置くエクスペリアンの日本法人、エクスペリアンジャパンが提供する海外企業調査レポートの特徴は、統計学モデルに基づいた8段階の倒産確率を付与している点です。エクスペリアングループや世界各国の調査機関とネットワークを構築しており、世界200か国以上を調査対象としています。
海外企業調査を専門としており、エクスペリアン独自の分析コメントを確認することができます。
参考:エクスペリアンジャパン
海外企業の調査後に注意!
海外企業の調査はコストや時間を要しますが、信用調査会社を上手に利用すれば、リスクを回避したうえで安心して取引を開始することができます。
しかし、海外企業調査を行ったとしても、その情報は調査時点のものであり、企業の信用情報は日々変化していくものです。1度の調査内容を鵜呑みにするのではなく、継続的な情報収集と与信管理を行い、自社の信用を落とさないよう注意しましょう。
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