ステルスマーケティングとは? 法的問題点と事例

画像はイメージです。実際とは異なる場合があります。

ステルスマーケティングとは、宣伝であることを明らかにせず消費者に商品を宣伝することです。

宣伝であることを隠すことで、一般消費者が「オススメ」しているように見せかけたり、評論家や専門家が商品を評価しているように思わせます。

通常、宣伝は広告代理店などが商品を売るためにアピールしているに過ぎず、消費者もそれを理解しているため、一歩下がって情報を受け止めています。

何者かになりすまして宣伝することによって、あたかもその商品が優れていて評価されていると思わせる(優良誤認)ことで通常の宣伝よりも高い効果を生む場合があります。

ステルスマーケティングの道徳的・法的問題点

ステルスマーケティングには、道徳的、法的な問題があります。

ステルスマーケティングの法的問題

ステルスマーケティングは欧米では違法行為

法的問題点について、アメリカでは連邦取引委員会法第5条第a項の「不公正又は欺瞞的な行為又は慣行」にあたります。
https://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/u/america.html

EUでは、2005年に不公正商慣習指令の第11項で、「料金を受け取っていることを示さずに編集コンテンツで商品を宣伝すること」「営利目的ないという印象をを与えたり消費者かのように偽装すること」を禁じています。

日本では景品表示法違反にあたる可能性

「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」において、「口コミサイトにおけるサクラ記事など、広告主から報酬を得ていることが明示されないカキコミ等」が「検討事項として想定される」としています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/e_commerce/pdf/koukoku.pdf

また、日本広告審査機構(JARO)や日本インタラクティブ広告協会(JIAA)といった団体がステルスマーケティングに対してガイドラインを設けています。
https://www.advertimes.com/20160311/article219867/

ステルスマーケティングの道徳的問題

道徳的には、消費者は常に宣伝に晒されて生活しており、魅力的な広告の商品をすべて選択するわけにはいきません。広告内容で商品を判断できるとも限りません。
消費者同士の「クチコミ」は商品を選択するための自衛手段でもあり、消費者になりすました宣伝者は「獅子身中の虫」です。

宣伝であることがバレなければいいのかもしれませんが、発覚した場合、余計な軋轢を生むことは間違いありません。

ステルスマーケティングが問題になった事例

2019年12月 ウォルト・ディズニー・ジャパンの「アナと雪の女王2」のSNSマンガ広告

2019年12月3日に映画「アナと雪の女王2」のキャンペーンに関連して複数のマンガがSNSのTwitterへ投稿されました。

投稿内容は映画を観に行ったポジティブな感想で、キャンペーン名の表記はありましたが宣伝であることを示す文章はありませんでした。
これらの複数の投稿が全く同じ時間にされたことから「ステマではないか」といった騒動になりました。

2012年1月 飲食店レビューサイト「食べログ」のクチコミ代行

2012年1月4日、飲食店を消費者がレビュー投稿できる「食べログ(運営:カカクコム)」において、料金を受け取って飲食店に好意的なクチコミを投稿する「ヤラセ業者」がいることが明らかになりました。

2001年 米ソニー・ピクチャーズの架空ライター

2001年、アメリカのソニー・ピクチャーズが架空の映画評論家「デビッド・マニング」を捏造。同社の映画を称賛する評論を書いていました。
ラジオ番組なども合成音声で出演するなど手が込んでいましたが、NewsWeekの調査で事件が発覚。同社は消費者に訴訟を起こされ、レビューを見て映画に満足できなかった観客全員に賠償金5ドルを支払うことで和解しました。

2012年 ペニーオークション

2012年、オークションサイトの「ワールドオークション」に対して、参加者が入札しても事実上落札ができず手数料だけが取られる実態が詐欺罪にあたるとして運営会社の役員らが逮捕される事件がありました。

このオークションサイトに関連して、複数の芸能人らが商品を購入したとしてブログに写真入りのコンテンツを投稿していましたが、実際には落札したものではなく、紹介料を受け取った宣伝でした。

2011年 ヤフー知恵袋

2011年10月、個人同士が質問と回答を行うQ&Aサイト「ヤフー知恵袋」において、質問者に対して消費者のふりをして商品をすすめるプランがあったことが明らかになりました。

ステルスマーケティングから商品ブランドを守るために

広告代理店は常に効果的な宣伝手段を求められており、ステルスマーケティングなどの問題のある広告はあとを絶ちません。特にウェブ広告は配信対象が選択されており、広告の依頼主には広告が見えないことも少なくありません。

ブランド棄損のリスクを避けるには、何らかの手段でソーシャルメディアやブログなどをモニタリングするなどしてしっかりと管理する必要があるでしょう。