私署証書 – 売掛金回収・未回収の分かれ道(第3回)

こんにちは。アラームボックス取締役審査部長の高見です。「売掛金回収・未回収の分かれ道」第3回は、私署証書に関するお話です。売掛金の回収のための有効な手段なので、しっかり理解を深めていきましょう。

私署証書について

まずは私署証書とその利用シーンを説明します。

私署証書とは

私文書に作成者が記名押印または署名したものを私署証書といいます。私文書とは私人により作成された文書であり、公文書以外の文書を指します。

私署証書の利用シーン

「売掛金回収と未回収の分かれ道(第2回)」で、売掛債権の支払いについて取引先から支払猶予や分割弁済の申し入れがあり、債権額が一定以上の場合には執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)を作成しておくのが無難だとご案内しました。社内の一定の基準にしたがい、たとえば債権額が30万円の場合は執行証書を作成しないことにしても、弁済時期等についてきちんと文書を交わしておくことには意味があります。この場合の文書は公正証書に対して私署証書ということになります。

この私署証書は「合意書」として執行証書と同様に当事者双方が記名押印する形をとっても構いませんが、取引先からみなさんの会社に対して差し入れる「念書」または「確約書」という形でも差し支えありません。

公正証書と私署証書の作成にあたって

公証役場で執行証書(公正証書)を作成してもらうとき、単に売掛債権額を記載するだけでなく、売掛債権の発生原因を特定します。売掛債権の場合、みなさんの会社が取引先に対して、いつ、どのような商品・役務を提供し、その代金がいくらであるかを明確にします。また、みなさんの会社と取引先の双方が印鑑証明書を提出します。

私署証書として売掛債権の弁済についての文書を作成する場合も、執行証書と同様に債権の発生原因を特定し、印鑑証明書を添付してもらうようにします。

実務における私署証書

債務名義取得と執行手続き

私署証書ですから、約定どおりに代金が支払われなかったからといって、直ちに差押え等の強制執行手続に移れるわけではありません。売掛債権額が30万円であれば、少額訴訟(※1)等の手続を踏まえる必要があります。

ただ、取引先からすると、売掛債権の存在やその発生原因、金額が特定された文書を印鑑証明書付きで提出していますから、裁判で争う余地があまりありません。裁判所から「被告(取引先)は原告(みなさんの会社)に対し金30万円を支払え」との確定判決が得られれば、それが債務名義となります(※2)。

また、「分割弁済にしてはどうか」との裁判所の和解勧告に双方が応じれば、たとえば5万円×6ヵ月の分割弁済とする内容の和解調書が作成され、これも債務名義となります(※3)。

私署証書作成の目安を決める

ところで、みなさんの会社が取引先に対して有する売掛債権は1社あたりいくら位でしょうか。もし数万円程度にすぎないのであれば、それが回収できなかった場合、弁済についての約定を執行証書にすることはもちろん、私署証書にすることさえ億劫ですし、費用対効果を考えれば裁判手続によって回収することも躊躇してしまいます。税務上も一定の要件を満たせば売掛金の貸倒れを損金算入することを認めていますから、数万円の売掛金が繰り返し督促しても回収できない場合は貸倒れ処理することが多いと思われます。

売掛金3万円が未回収になり、貸し倒れたからといってみなさんの会社の経営に大きな影響を及ぼすことはないでしょうが、約束したお金が支払われないことを見逃すわけにはいきません。また、塵も積もれば…で、少額の貸倒れであってもそれが十数件にのぼればさすがに無視できなくなります。売掛金回収のための有効な手段として、私署証書を活用していきましょう。

次回は売掛金の回収に影響を与える「消滅時効と催告」について

次回は、大切な売掛債権の権利が失われないように、消滅時効催告に関してわかりやすく説明をしていきます。売掛金の回収可能性を高めるために知っておきましょう。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。少しだけお知らせです。
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※1 民事訴訟法 第368条以下
※2 民事執行法 第22条第1号
※3 民事訴訟法 第267条
民事執行法 第22条第7号

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