コンプライアンスチェックとは、取引先が反社会的勢力と関わり合いがないか、不祥事や法令違反をしていないかを調査することです。自社が潔白であっても世間の目は厳しくなっているので、取引先にこうした企業があり、そのことが発覚した場合に巻き込まれる可能性が高くなります。
本記事では、今や必須事項であると言っても過言ではないコンプライアンスチェックについて、概要から必要性、実施する方法などを解説します。
目次
コンプライアンスチェックとは?
コンプライアンスチェックとは、取引先の企業や株主、役員のなかに、「反社会的勢力との関わりが疑われる人物や組織がある」、「不祥事や法令違反」など、コンプライアンス違反をしていないかをチェックすることです。同様の意味で使われることが多い反社チェック(反社会的勢力チェック)も、コンプライアンスチェックに含まれます。
自力でセルフチェックする企業もあれば、外部に依頼するケースもあります。
コンプライアンスチェックは義務ではありませんが、知らないうちにコンプライアンスに違反している企業や個人と取引があり、それが発覚した場合には知らぬ存ぜぬでは通せません。社会的信用を失い、企業の存続に影響を及ぼす可能性もあるので、そうした事態を避けるためにもコンプライアンスチェックが必要になります。
政府や自治体の取り組み
近年、コンプライアンスチェックに関する意識が高まっており、2007年には法務省が「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表しています。また、2011年には各都道府県が「暴力団排除条例」を施行。金融庁でも「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」のなかで、反社会的勢力による被害の防止について触れています。
場合によっては行政処分を受けたり、銀行から融資を受けられない事態に陥ったりするので、コンプライアンスチェックは企業の自衛のためにも必須項目の一つと言えます。
コンプライアンスチェックの必要性
コンプライアンスチェックを怠り、反社会的な勢力と関係のある企業と契約を結んでしまった場合、たとえ意図的でなかったとしても、会社には下記のようなリスクが降りかかります。
【コンプライアンスチェックを行わないリスク】 |
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・法令違反の処分 ・契約違反による取引停止 ・金融機関との取引が停止 ・監督官庁からの処分 ・証券取引所による処分 ・企業のイメージダウン |
最悪の場合、廃業に追い込まれるリスクを抱えることになります。そうならないためにも、コンプライアンスチェックは必ず行いましょう。
法令違反の処分
先にも紹介したとおり、各都道府県が取り組む暴力団排除条例など制定しており、反社会的勢力排除に取り組んでいます。コンプライアンスチェックを行わずに、反社会的な勢力と関係のある企業と取引してしまった場合は、当然ですがこうした条例に違反することになり、勧告や公表、防止命令や罰則などの処罰を受ける可能性があります。
契約違反による取引停止
昨今ではコンプライアンスチェックに対する意識の高まりにより、コンプライアンスに関する項目を契約書に記載している企業も多々あります。もし別の取引先にコンプライアンス違反をしている企業が紛れ込んでいたことが発覚した場合、契約違反として該当企業から取引の停止を言い渡される可能性があります。
金融機関との取引が停止
2013年に金融庁から、金融機関・団体に対して、「反社会的勢力との関係遮断に向けた取組みの推進について」が通達されています。下記のような項目を掲げ、反社会的勢力との関係遮断を推進しています。
・暴力団排除条項の導入の徹底
・提携ローンにおける入口段階の反社チェック強化
・事後的な反社チェック態勢の強化
そのため、万が一取引先に反社会的勢力と関係のある企業があることが発覚した場合、金融機関からの融資がストップする可能性も否めません。資金繰りに行き詰まり経営が傾くことも考えられるので、コンプライアンスチェックは実施しておくのが安心です。
監督官庁からの処分
監督官庁とは民間企業や公共団体に対して、業務を監督する権限を持つ官庁のことです。たとえば金融機関であれば金融庁が監督官庁です。
コンプライアンス違反があった場合、監督官庁から業務改善命令などの行政処分を受けることになります。こうした情報は瞬く間に業界内に広まるため、業界内外からの信用が失墜する可能性が高いでしょう。
許認可業種の場合は、状況次第では許認可の取り消しもあり得るので、事業継続が危うくなります。
証券取引所による処分
東京証券取引所では上場の審査基準として、「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」を掲げています。その「内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況」において、「反社会的勢力排除に向けた上場制度及びその他上場制度の整備について」では「反社会的勢力排除に向けた体制整備についての開示を行うもの」としており、この基準に適合しない場合は、上場廃止となる可能性があります。
企業のイメージダウン
反社会的勢力と取引があることが明るみに出た場合、当然ですが企業やブランドが持つイメージは低下するため、取引先だけでなく顧客離れも考えられます。これにより業績悪化や社会的信用が喪失し、利益も著しく低下するでしょう。金融機関からの融資も絶望的な状態になるので資金繰りができず、最悪の場合、廃業に追い込まれる可能性もあります。
反社会的勢力の範囲
反社会的勢力というと「暴力団」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実のところ反社会的勢力は暴力団だけではありません。2007年に「犯罪対策閣僚会議幹事会」において、反社会的勢力について次のような指針が挙げられています。
【反社会的勢力についての指針】 |
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・暴力団 ・暴力団関係企業 ・総会屋 ・社会運動標ぼうゴロ ・政治活動標ぼうゴロ ・特殊知能暴力集団等 |
広くは「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」であり、また、「暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件」も対象となります。そのため、属性だけで判断できるものでもなく、不当な行為がある場合も反社会的勢力と判断されます。
しかし、この行為に対する線引きは難しいため、黒に近いグレーな企業も存在するのが現状であり、そこをどう対処していくかが悩ましいところでしょう。
コンプライアンスチェックの方法
コンプライアンスチェックを自社で行う場合は、下記のような方法があります。
【コンプライアンスチェックの方法】 |
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・インターネットで検索 ・雑誌や新聞で検索 ・反社チェックデータベースを利用 ・自動検索ツールを活用 ・信用調査会社を利用 |
インターネットで検索
取引先を表す要素をインターネット上で検索する方法です。
たとえば下記のようなキーワードと合わせて「暴力団」や「反社」といったネガティブワードで検索をかけることで、情報を得られます。
・商号
・代表者名
・役員名
・主要株主
インターネット検索の場合、無料ですぐにはじめられるメリットがありますが、誤情報も多いため、見極めが難しい点はデメリットと言えるでしょう。
雑誌や新聞で検索
雑誌や新聞記事のデータベースを活用して、インターネットと同じく「商号」や「代表者名」などと合わせて、「不祥事」や「暴力団」といったネガティブワードで検索する方法です。
全国紙から地方紙までを一括で検索できる点がメリットとして挙げられますが、膨大な量がヒットすることもあり、確認作業に時間と手間がかかる可能性がある点はデメリットです。
反社チェックデータベースを利用
各業界団体や公的機関が保有している反社チェックデータベースを活用して調べる方法です。このデータベースを活用すれば精度の高い情報を得られますが、照会が必要であり、利用のハードルが高く手続きに手間がかかるのが難点です。
アラームボックスでは、ワンコインで素早く反社チェックデータベースを用いた調査ができるサービス「パワーサーチ」を提供しています。さらに、500円追加することで新聞記事検索、インターネット検索まで行うことができ、関係のない情報はスクリーニングされて届けられるなど、網羅性が高く業務効率化が可能なチェックが可能です。ぜひご活用ください。
自動検索ツールを活用
インターネットや雑誌・新聞で検索する手間を自動化してくれる、自動検索ツールを活用するのも一つの手です。
自動検索ツールを活用すれば、手動で行っていた「検索」や「証跡のPDF変換」、「フォルダへの保存」を自動化できるので、コンプライアンスチェックにかかる手間を大幅に削減できます。
信用調査会社を利用
徹底的に調べたい場合は、信用調査会社に依頼することも検討しましょう。
依頼条件(何を、どうやって調べたいのか)を伝えることで調査を代行してくれるため、手間と時間の削減になることはもちろん、自社で調べるよりも精度が高い情報が得られるというメリットを享受できます。ただし、1件あたり数万円かかるため、他の調査と比べて費用面が大きな課題となります。
契約前に確認しておきたいポイント
反社会勢力と関係している会社との契約は未然に防止できるにこしたことはありません。新たに取引をはじめる場合に確認しておきたいポイントとして、下記を意識しておきましょう。
・契約書に反社条項を設置する
・会社情報をリサーチしておく
契約書に反社条項を設置する
契約書に反社条項を設置することで、反社会的勢力はその実態を明かす必要性が出てきます。もし反社会的勢力であることを隠して契約に至った場合、該当企業は詐欺罪に問われ、逮捕される可能性も考えられます。反社会的勢力にとって契約のハードルが上がるため、牽制する意味で契約書に反社条項を盛り込むことを検討しましょう。
それでも契約する可能性はゼロではないので、反社条項を盛り込んだことに安心するのではなく、契約時には相手の様子をしっかり確認しておくことも大切です。
会社情報をリサーチしておく
これまで説明してきたとおり、コンプライアンスに違反している企業と取引してしまうと、自社に多大な損害をもたらす可能性がでてきます。そのため、取引開始前には下記のような下調べをしておきましょう。
取引開始の経緯:取引を開始するきっかけとなった人物や企業に反社会的勢力との関わりがないか
商業登記情報:法人番号があるか、短期間に商号や本社所在地を変更していないか
会社のホームページ:景品表示法、不正競争防止法、特定商品取引法などに抵触する表記・表現がないか
業績や財務、取引実績:業績や財務の急激な変化、不自然な資金調達がないか。該当企業の取引先に怪しい企業がないか
風評:同業者や業界を知っている人から悪い噂が出てこないか。業界団体に相談するのも手
まとめ
コンプライアンスチェックは実施しておいて損はないどころか、実施しないことで被るデメリットが大きすぎるので、必ず実施するようにしましょう。自社が健全な活動をするうえで、明後日の方向から横やりを入れられないよう、リスクヘッジできるところは事前に対策しておくことをおすすめします。