59回目の倒産情報レビューは、東京都千代田区にて養鶏事業を展開し、「森のたまご」などの開発・販売を手掛けている「イセ食品株式会社」です。
目次
イセ食品株式会社 企業情報
イセ食品株式会社について
イセ食品株式会社は1912創業。同社は、鶏卵の開発・販売事業を主力に展開しており、商品のブランド力や高い品質管理・生産体制、日本全国に営業所を持つ販売力などから鶏卵業界のトップシェアを誇っていました。また、1990年から発売されている『森のたまご』は高い知名度を有しているだけでなく、2019年には日本初の機能性表示食品卵「伊勢の卵」を発売、米国やアジアにも進出するなど幅広く事業を展開していました。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により飲食店の営業時間短縮や休業が相次ぎ業務用卵の需要が減少。また、鶏の飼料となるトウモロコシや大豆などの穀物価格が高騰し業績が悪化。このような状況の中、過去に進めた投資に伴う金融債務が資金繰りを圧迫。同社は私的整理による再建を図っていましたが、金融機関との調整が難航し、大口債権者から東京地裁に会社更生法の適用を申請されました。
現在はスポンサー企業として「株式会社SMBCキャピタル・パートナーズ」からの支援を受けており、2023年5月1日には東京地方裁判所から再生計画認可の決定を受け、再生に向け事業を進めています。
イセ食品株式会社:“更生計画認可決定及び事業家管財人変更のお知らせ”
イセ食品株式会社の倒産までのアラーム情報まとめ
上記の画像を見ると会社更生法の適用までに倒産の兆候として何度かアラームが発生しています。
2019年以前は、同社に対する問い合わせの増加や、SNSの掲示板上から商品に関するクレームが見受けられたため「チェック」のアラームが発生していました。
その後2020年に入ると、倒産に直結する情報が増えてきました。2020年8月、当社の提携調査会社経由で同社代表の退任に関する情報が入り「注意」のアラームが発生。その後9月には当社の提携調査会社経由で社内人事のネガティブ情報と、取引先への支払遅延関連の情報が入り「注意」のアラームが発生。また、SNSの掲示板上からハラスメントに関する口コミが発生しており「チェック」のアラームが発生しています。
11月には国税庁のサイトより本店移転の情報が確認され、移転先がレンタルオフィスであったため「注意」のアラーム、ビジネス誌の情報から業績悪化によりファクタリングを利用するという情報が入り「注意」のアラーム、弊社にて登記情報を確認した際に債権譲渡登記の設定を受けていることが判明し「注意」のアラームが発生しています。
2021年に入ると、1月には同社に対する問い合わせの増加によって「チェック」のアラームが発生。また、弊社独自で入手した情報から、同社代表が所有する美術品を融資に入れているとのうわさがあり「注意」のアラームが発生しています。その後、2月には当社の提携調査会社経由で同社代表の退任に関するうわさがあり「注意」のアラームが発生。3月には同じく当社の提携調査会社経由で鳥インフルエンザの影響を大きく受けているとのうわさから「注意」のアラームが発生しています。
4月には弊社独自で入手した情報から、金融機関からの支援を受けるには同社代表の退任が条件となっているとして「注意」のアラームが発生。6月には同社に対する問い合わせの増加によって「チェック」のアラーム、SNSの掲示板上から勤務関連に関する口コミが続き「チェック」のアラームが発生。7月には6月と同じく同社に対する問い合わせの増加によって「チェック」のアラームが発生しています。
9月には当社の提携調査会社経由で支払い遅延関連の情報が入り「注意」のアラームが発生。10月には同じく当社の提携調査会社経由でクラウドファンディング中止の情報が入り「チェック」のアラームが発生しています。
2022年に入った倒産直前になると、1月には当社の提携調査会社経由で生産拠点の一部を売却するとのうわさが入り「注意」のアラームが発生。また、同社HPより子会社の事業を譲渡する旨の情報が入り「チェック」のアラームが発生しました。その後、2月には当社の提携調査会社経由でバンクミーティングの開催や、事業譲渡でも財務面が改善されないという情報が入り「注意」のアラームが発生。これらの結果、2022年3月に入り会社更生手続きの申請がされました。
このように2020年ごろから業績悪化や倒産に直結する情報が度々発生していました。
イセ食品株式会社の会社更生申請後のアラーム情報
会社更生手続きの申請があった後も当社の提携調査会社やSNS・掲示板から同社に対して様々なアラーム情報が発生しており、注目を集めています。
特にスポンサー企業の選定に関する当社提携調査会社経由でのアラーム情報が多く発生しており、株式会社SMBCキャピタル・パートナーズに決定した2022年11月までの間に、
「数十社の企業がスポンサー支援に名乗りを上げているという情報」
「主力となっていた資本提携先の撤退が判明したという情報」
「スポンサーの選定に時間を要しており、再生計画の期限が延長しているという情報」
など複数のアラーム情報が発生していました。
また、スポンサー選定関連以外の情報では、SNSの掲示板上からから会社更生前から賞与が出ていなかったという口コミ情報や、当社の提携調査会社経由で不良債権の発生や大口取引先との取引減少に関する情報が発生しており、注目度の高い状況が続いていました。
現在は再生に向け事業を進めている状況です。今後の動向について引き続き注視していきましょう。
イセ食品株式会社の倒産情報から分かること
インターネットで「イセ食品株式会社 倒産」「イセ食品株式会社 評判」で検索すると様々な情報が出てきます。
今回の倒産では、2020年ごろから業績や支払い遅延に関する情報が発生しており、業界で主要な取引先であってもモニタリングしていくことが与信管理では重要であることが分かります。
さらに、今回の倒産事例ではネット上の口コミサイトやビジネス誌からの情報も多くあったものの、倒産に直結する情報として、登記情報や、アラームボックスの独自情報、当社の提携調査会社からの情報が散見されました。
インターネット情報の重要性だけでなく、登記などの公的機関情報や与信管理専門の調査会社からの情報など、情報源を広く持つことが重要であると再度認識させられる事例となりました。
当社は「アラームボックス」の運営を通じて、インターネット情報、独自情報、当社の提携調査会社からの情報と、多くの情報源から倒産となりうる情報を継続的に入手しています。アラームボックスが与信管理における経営判断の一助となれば幸いです。
最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございました。
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