民事再生の種類とは?メリットや代表的な民事再生の事例を紹介

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経営が破綻した場合、企業は「民事再生」という手段で再起を図ることができます。民事再生の種類やメリット・デメリットのほか、具体的な流れなどについて解説します。

「民事再生」は、企業が再起を図る手段です。景気低迷による販売不振、時代や市場の変化に対する判断ミスなどにより、企業が窮地に陥ることがあります。最悪の場合、経営が破綻してしまうことも。しかし、事業を継続すれば立て直せるなど、希望があれば民事再生で再起を図ることができます。
ここでは、民事再生の種類やメリット・デメリットのほか、具体的な流れなどについて解説します。

民事再生とは倒産に伴う裁判上の手続きのこと

民事再生とは、企業の倒産に伴う裁判上の手続きのことをいいます。倒産というと会社が消滅するイメージがありますが、実際には「清算型倒産」と「再建型倒産」の2つの方法があり、再建を選択すれば企業を存続することが可能です。なお、民事再生の場合は、再建型倒産にあたります。

清算型倒産

清算型倒産は、会社の保有資産を売却して債務者への弁済にあて、会社を消滅させる方法です。清算型倒産には「清算手続」と、債務超過の疑いなどがある場合に開始される「特別清算手続」があります。

再建型倒産

再建型倒産は、企業の存続を目的として債務を減らし、経営再建を目指す方法です。「民事再生手続」のほか、「会社更生手続」があります。民事再生手続と会社更生手続には、経営陣の処遇や財産の管理者などに違いがあります。

・民事再生手続

民事再生手続は、すべての法人が対象の制度です。手続きが開始しても、経営者、および役員は退任しません。現経営陣の主導で再建計画案を立て、債権者と裁判所の認可が得られたら弁済を進めていきます。ただし、裁判所が選任した監督委員がつくことが多く、重要事項の決定には監督委員の同意が求められるでしょう。
原則として担保権の行使は可能ですが、担保となっている債務者の財産が事業継続に欠かせないものであるときなど、一部例外的に実行を防げる場合があります。再建計画の認可まではおよそ半年と短く、弁済期間は原則として認可が確定してから3年、長くて5年と定められています。

・会社更生手続

会社更生手続の適用は株式会社限定で、手続きが開始したら経営陣は交代しなくてはなりません。経営権や財産の管理権は裁判所が選任した更生管財人に引き継がれ、管財人のもとで会社の再建を図ります。担保権は再建手続きに取り込まれるため、手続き以外で行使することはできません。
会社更生手続は、債権者数が多く債権額も大きい場合を想定した制度であるため、手続きが複雑で再建に時間がかかるのが課題でした。2003年の改正で更生計画案の可決要件が緩和され、最短1年、最長3年以内で認可されるようになっています。併せて、弁済期間も最長20年間から最長15年間に短縮されました。

民事再生手続の種類

民事再生手続には、事業資金を外部から募ったり、事業・財産を切り売りして資金を得たりするなど、大きく分けて3つの方法があります。それぞれの民事再生手続の方法について解説していきましょう。

スポンサー型

スポンサー型は、メインバンクや同業他社などからスポンサーを募り、資金援助を受けて再生を目指す民事再生手続の方法です。ただし、「債務によって経営困難になったものの、事業自体には収益性がある」「他社にない技術がある」など、スポンサーが出資するに足る魅力がないと難しいでしょう。

自力再建型

自力再建型は、民事再生手続で債務を圧縮・減額し、事業の採算性を高めて債務を弁済することで再生を図る方法です。スポンサーが見つからないケースで、収益が安定している場合に選択されます。

清算型

清算型は、複数の事業を持っている場合に、再生価値のある事業の全部、または一部を譲渡し、譲渡先で事業を存続させます。また、譲渡によって得た資金で弁済を行った上で、残った会社を清算します。

民事再生のメリット・デメリット

民事再生を選ぶことで、企業は再起を狙えます。しかし、民事再生を選ぶことによるデメリットも存在します。続いては、民事再生手続におけるメリット・デメリットについて解説します。

民事再生のメリット

民事再生を選択した場合は、主に下記の3つのメリットがあります。

・事業を継続できる

民事再生では、債務が減額されるほか、最長10年の弁済猶予が受けられます。そのため、会社をたたむことなく、事業を継続したまま債務を弁済し、再生を目指せるのが最大のメリットです。

・経営権を維持できる

民事再生をすることで、現経営者、経営陣が続投できます。会社更生手続では経営陣の退陣が求められ、会社の再生は他者にゆだねなければなりません。民事再生は、計画どおりに再建できれば、財務体質を改善した上で以前と同様に経営していくことができます。

・手元資金を確保できる

民事再生は、申請したら申し立ての事実を金融機関に伝えます。通達後に入金された預金については金融機関による相殺が禁止となるため、入金分をそのまま債務者の資金繰りにあてることが可能です。

民事再生のデメリット

民事再生は、再起を図る企業にとってはメリットが多いでしょう。一方で、下記のようなデメリットも存在します。

・社会的信用が低下する

民事再生の申し立てをすると、官報による公告、信用調査会社の倒産情報などで情報が公になります。場合によっては、メディアで取り上げられることもあるでしょう。再生を目指しているとはいえ、取引先や従業員からの信用失墜は免れません。また、うまく再生したとしても、信用を取り戻すには時間がかかります。

・手続きに費用がかかる

民事再生の申し立てには、負債総額に応じた予納金を裁判所に納める「予納金」が必要です。支払えない場合、申し立ては棄却されます。また、多くの場合、着手金と、手続きが完了した場合の報酬金といった「弁護士費用」がかかります。

・担保権が実行される可能性がある

民事再生は、原則として担保権の行使を防ぐことはできません。担保権を持っている債権者は、民事再生手続とは無関係に担保権を実行し、債権を回収することができます。債権者が担保としているものが事業の継続に欠かせない場合、担保権を実行されると企業の再建は難しくなるでしょう。

民事再生の流れ

民事再生は、一般的に下記のような流れで進行します。

1.手続き準備

民事再生は、まず申立代理人弁護士を選定し、必要資料の準備を行います。

2.民事再生法による民事再生の申し立て

必要書類が準備できたら、裁判所に手続き開始の申し立てをし、予納金を納付します。
申し立てが受理されると、申し立て以前の原因による債権に対する弁済を禁止する保全命令が発令されます。また、監督委員が選任され、その監督下に入ります。

3.再生手続開始

民事再生手続は、債権者の強硬な反対を受けた場合を除いて、裁判所への申し立てから1週間以内に開始されます。

 4.再生債権の届け出

会社が保有するすべての財産について、財産目録および貸借対照表を作成して裁判所に提出します。

5.再生計画案の提出~認可

会社が保有する財産を洗い出す再生債権の調査を経て、再生計画案を提出します。債権者集会や書面などで債権者の賛成を得られた場合、裁判所が再生計画認可の決定をします。

民事再生を行った主な企業

2000年に民事再生法が施行されて以降、さまざまな企業が同法の適用を受けて民事再生手続を行ってきました。代表的な事例を紹介します。

株式会社レナウン

株式会社レナウンは、日本の大手アパレル企業です。2020年に民事再生法の適用を申請し、主要ブランドをスポンサーに譲渡。譲渡対象外のブランド事業を清算するなど、現在は民事再生手続から清算型の破産手続に移行しています。

東証1部上場のレナウンが民事再生法申請

千鳥観光汽船株式会社

千鳥観光汽船株式会社は、沼津港と三津港を中心にクルージングなどマリンレジャーを手掛けていました。しかし、コロナ禍により観光客が減少。自力再建が困難となり、民事再生法の適用を申請しました。スポンサーの支援を受ける形での再生が決まり、営業は継続しています。

遊覧船や観光船を手掛ける千鳥観光汽船が民事再生

株式会社枻出版社

株式会社枻出版社は、趣味の雑誌や本を手掛けてきた出版社です。出版不況で業績が悪化し、自主再建を断念。一部雑誌や飲食店事業を別会社に譲渡し、現在も継続して運営しています。

「(株)枻出版社」が民事再生 アメカジ誌「Lightning」など

取引先の経営状態をウォッチし、リスクに備えよう

民事再生手続は、債務者の事業または経済生活の再生を図ることを目的としています。債務者が民事再生の申し立てを行うと、再生計画が認可されるまで債権者は債権を回収することができません。こうした事態を防ぐには、普段から取引先の与信状況を継続的にチェックしておくことが大切です。

インターネット上に存在する既存取引先の風評や信用情報を継続的に調査し、変化やリスクを自動的に知らせてくれる「アラームボックス」を活用し、取引の安全性を高めましょう。