取引先管理とは – 経営者・取締役のための与信管理(取引先管理編)

こんにちは。アラームボックスの取締役審査部長の高見です。

今回は、与信管理の中でも多くの企業で苦手分野ともいえる「取引先管理(モニタリング)」についてです。

このシリーズ「経営者・取締役のための与信管理」では、マネジメント層の方を対象に、経営判断する上で欠かせない基本的な与信管理の知識から、実際に起こりうるイレギュラーなケースへの注意事項や対処方法など、経営と実務の経験者の観点からお伝えします。

取引先管理とは

取引先の与信枠や与信限度額の継続的な管理・モニタリングについて解説します。

取引先管理とは?

取引先管理とは、取引先に対して掛売りなどで販売を継続する際に、当初設定した与信枠や与信限度額を変動させて、売掛金の額が適切な水準になるように管理調整をすることです。顧客管理の最も重要な部分のひとつといえます。また、広い意味で取引先の与信管理を捉えれば、販売先である顧客だけではなく、主要または希少な仕入先などにも適用すべきです。

取引先管理の肝は信用情報

一般に、企業の信用情報は「企業の評価を修正する必要があると思われるすべての情報」と定義できます。取引開始時に決めた与信枠や与信限度額を、その後発生した信用情報で修正していくわけです。企業の信用情報は評価を下げる必要があるものばかりではありません。評価を上げて良いと判断される情報もあります。いざ取引先の信用情報が発生したら、いまの与信枠や与信限度額が妥当かどうかを判断します。

取引先の信用情報発生によって評価を見直すといわれてもピンとこないかもしれませんが、例えば株式市場を思い出してください。株式を上場している企業は、投資家に向けて企業活動に関する重要な情報を「適時開示」することが義務付けられています。投資家が平等に情報を得られるようにするためです。業績予想が良くても悪くても適時に開示する必要があるわけです。不祥事が発生したり、新製品の売り上げが予想以上に好調だったりすれば、適時に情報が開示されます。これにより、企業の評価(=株価)が上下し、企業の評価がリフレッシュされていくわけです。

取引先管理も、取引先企業の評価結果である与信枠や与信限度額を見直すという点で同じですね。

取引先管理の本来の目的とは

取引先管理のひとつの目的は売掛金の未回収をなくすことです。しかし、混乱させるようで申し訳ありませんが、それが本当にゴールなのでしょうか。「与信管理」は、取引先からの未回収を排除・軽減する活動、と定義されることがありますが、それでは不十分な定義だと考えています。与信管理は未回収を排除・軽減しつつ、売上・利益を最大化すること、あくまでも目的は、売上・利益の最大化だと私たちは考えています。未回収の可能性がちょっとでもある企業との取引をすべて断れば、未回収ゼロが実現できるかもしれませんが、与信管理の本来の目的である売上・利益の最大化とはいきません。取引先管理の本来の目的を忘れることなく、与信枠や与信限度額の見直しを行っていきましょう。

取引先管理の実務

重点的に管理していく取引先を設定する

取引先の総数にもよりますが、数多くの取引先がいる場合は、優先順位をつける必要があります。自社で情報収集をするにせよ、信用調査会社から情報を購入するにせよ、労力や費用が発生します。

そこで、一般的には2つの取引先群を重点的に管理していくことになります。

主要取引先の管理

1つは、売掛金が大きな主要取引先です。ある時点での主要取引先の信用力が高いとしても、変化の激しい時代に将来にわたって安泰な企業はありません。未回収リスクは低いとしても、万が一の際に売掛金が未回収となれば自社の存続に関わる影響がある主要取引先は、継続的にウォッチしておく必要があります。

懸念取引先の管理

もう1つは、信用力が低い取引先です。大きな与信枠や与信限度額を設定していることはないはずですが、売掛金の未回収が発生する可能性は高いため、情報は素早くつかんで、なにかあればすぐに対応する必要があるため、継続的にウォッチしましょう。

定期チェックは決算期に合わせて

教科書的にいえば、取引先の決算が出たタイミングで情報を収集して、与信枠や与信限度額を再設定することが望ましいです。ただし、現実的にはほとんどのケースで取引先の正確な決算情報を取得できないのが実状でしょう。また、伝統的な与信管理手法である決算書・財務分析は精緻な分析手法であるものの、過去情報であるため、「鮮度」という点で完ぺきないことは、別の記事で述べたとおりです。

不定期(日常)チェックで注意すべき信用情報は「不芳(ふほう)情報」

取引先管理で重要なことは、日常の情報収集にあります。取引を行っているなかで、取引先企業に変化がないか、業界での評判はどうかなど、日常的にチェックする必要があります。

実際、与信管理の現場で重要なのは不芳情報(不安情報、ネガティブ情報等)と呼ばれる信用情報です。この手の情報を入手した場合、企業評価を下げる必要があるのかどうかを判断しなければなりません。一方、情報がなにもないのは良い知らせともいえます。

不芳情報は、「粉飾をやってるらしい」「大口の不良債権が発生したようだ」「行政処分を受けるようだ」「取引銀行が追加融資を打ち切ったらしい」「役員が一斉に退任した」といった具体的な内容のものです。このような情報の一部は上場会社であれば適時開示として入手可能です。しかしながら、非上場の場合は信用調査会社や業界、取引先等で語られたものがなんとなく漏れ伝わってくるのが主なルートで、明確に発表されたりするものではありません。入手した不芳情報が信用悪化のシグナル(信号)なのか、悪質なデマ=ノイズ(雑音)なのか吟味する必要があります。

ネットに不芳情報が書き込まれる時代

いまや世の中はビッグデータ花盛り、不芳情報もネット上に書き込まれたりする時代です。

反面、いまは情報が氾濫している時代とも言えます。企業に関する信用情報は、現在、手軽に容易にネットから収集することが可能となりました。取引先の状況の変化を知りたい、あるいは自社に関する悪い情報がないか心配だといういうニーズは根強く、これに対応したサービスもあります。ただ、ネット上の情報の特徴のひとつは匿名性があるということです。不芳情報の文脈でいえば、根拠のない情報、うわさが相当程度混在している状態といえます。

こんなケースに注意

もし売掛金が未回収になる恐れが生じたら

どんなに取引先管理をきちんとしていても、取引先の信用が悪化する場合はあります。支払い遅延が発生して、初めて状況に気づくこともあるでしょう。その際に、まず最初に行うべきことは、現状を正確に把握するために、電話や面談などで直接情報を収集することです。単純な支払い忘れなどの事務手続きのミスなのか、お金が無くて支払いができないのかでは大違いです。お金が無い場合は、いつまでに支払いができるのか、その支払いのための資金はどのように調達するのかを把握しなければなりません。

また、その際に不芳情報がある場合は、他の会社にも未払いのお金があるのかなども確認しましょう。話し合いの結果、売掛金が回収不能になる可能性が高いと感じれば、裁判などの法的手段を検討することも必要です。法的手段をとらずに売掛金が回収できれば良いですが、売掛金回収の1つの方法として法的手段が有効な場合もあるので、売掛金がいざ未回収になった場合には相手が倒産してしまう前に与信管理の専門家に相談しましょう。

売掛金の回収は様々な方法があるため、詳しく知りたい方は「売掛金回収・未回収の分かれ道」もオススメです。

取引先管理における注意事項

この記事は、「経営者・取締役のための与信管理」のタイトルどおり、マネジメント層の方を対象としているため、現実に起こりうる少し突っ込んだ話もしておきます。

取引が開始してお互いの信頼関係できてくると、取引額が増加していくのはごく自然な流れです。地道な営業活動や商品改良などの結果として、勝ち取った売上だと思いたい気持ちは良くわかります。しかし、取引が増加しているときでも、冷静にその理由を分析する必要はあります。

特に注意すべきは、取引先の信用状況が悪化していて、従来の仕入先から掛売りを縮小されてしまい、代わりに自社の取引額が増加しているケースです。当然、取引先はそんな理由で御社との取引が増加しているとは申告してはくれません。このようなケースでは、売掛金が膨らんだところで取引先が倒産し、売掛金が未回収になるという最悪の事態が想定されます。

売上増加は喜ばしいことですが、掛売りによって売掛金が増加していること、取引先の信用情報の収集を怠らないこと、これらを忘れないように注意しましょう。

アラームボックスからお知らせとお願い

さいごまでお読みいただきまして、ありがとうございました。少しだけお知らせとお願いです。

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今回の記事は「取引先管理(モニタリング)」をテーマにしました。関連する記事として「与信管理のトリセツ」や「売掛金回収・未回収の分かれ道」もおすすめですのでご覧ください。今回の記事が気に入った方は、友人知人へシェアや紹介をお願いします。

では、また別の記事でお会いしましょう。

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