債権譲渡登記とは|利用するメリットや申請・閲覧方法をわかりやすく解説

画像はイメージです。実際とは異なる場合があります。

今回の記事、債権譲渡登記や動産譲渡登記の詳細、申請にかかる費用、取得・閲覧方法などについて詳しくまとめました。債権譲渡登記や動産譲渡登記について知りたいという方はぜひ参考にしてください。 

【わかりやすく解説】債権譲渡登記とは

そもそもの「登記」とは、法人や個人、不動産をはじめとした財産に対する権利や義務を保護するための行政制度です。法務局へ登記申請し、受理されることで効力を発揮します。

この記事でご紹介する「債権譲渡登記」とは、法人が第三者に金銭などの債権を渡す際に、第三者に対しての対抗要件を備えるための制度です。対抗要件とは、既に成立した権利関係を他人に主張するための法律要件のこと。債権譲渡登記を用意しておくと、法律上の引き渡しが行われた証明や、対抗要件が明記された公的な書類として活用できます。 

債権譲渡登記制度とは

債権譲渡登記制度とは、登記の一種で、法人の金銭債権の譲渡を公示するために記録されるものです。本来は民法上では登記の対象にならないものに対して例外として設けられた制度であり、動産に関する債権譲渡登記は、該当する動産の譲渡の日時や第三者による対抗要件を作成します。

譲渡登記ファイルが制度に基づいて登録されれば、民法に則った条件で債権の引き渡しがあったものと認められるため、不当な譲渡ではないことが証明されます。 

動産譲渡登記とは

動産譲渡登記は、機材や在庫などの動産を譲渡した場合に、対抗要件を備えるための制度です。不動産を持っていない中小企業などの資金調達方法として使われています。

例えば、A社がB銀行から融資を受けるためには、別のC会社を売掛金債権を担保とし、B銀行へ債権譲渡を行わなければなりません。債権譲渡登記は、譲渡したA側に負債が多くなり債務が返せなくなった場合に、受取人が直接回収できるようにするための担保です。

一方、動産譲渡では、A社が融資を受けるための担保がない場合、保有している機械や在庫を製造できる機械設備を動産として担保とできます。仮にA社が債務を返せなかった場合は、基本的には担保として設定した機械を引き渡さなければなりません。しかし、動産譲渡登記をすることによって、A社が機械を占有し、使用し続けることも可能になります。 

債権譲渡登記や動産譲渡登記を利用するメリット

債権譲渡登記や動産譲渡登記をすることには、さまざまなメリットがあります。

債務者にとっては、不動産や保証人がなくても資金調達が可能な点がメリットとして挙げられます。そのため、資金調達の可能性も拡大します。また、第三債務者に知られずに債権譲渡を行える点もメリットといえるでしょう。

債権者にとってのメリットは、多数の債権を一括して把握できる点です。また、手軽に対抗要件を備えられることもポイントといえます。

債権譲渡登記・動産譲渡登記の申請方法

申請にあたっては、下記の書類が必要です。

<必要書類> 

  • 登記申請書 
  • ・取下書 
  • ・譲渡人の代表者の資格証明書(3ヵ月以内のもの)
  • ・譲渡人の代表者の印鑑証明書(3ヵ月以内のもの) 
  • ・存続期間が登記の日から50年(債務者不特定の債権を含む場合には10年)を超えるときは、その存続期間を定めるべき特別の自由があることを証する書面 
  • ・申請データを記録したCD-RもしくはCD-RW 

印鑑証明書や資格証明書は、取得後3ヵ月が経過していないものを用意しましょう。登記に必要な書類をすべてそろえ終わったら、東京法務局民事行政部債券登録課に提出してください。

参考:[法務省 債権譲渡登記の申請]

債権譲渡登記・動産譲渡登記の申請にかかる手数料・費用

債権譲渡登記・動産譲渡登記の申請には以下のように費用がかかります。

証明書 債権譲渡登記  動産譲渡登記 
登録免許税 債権個数が5,000個以下の場合
7,500円
5,000個以上の場合15,000円
7,500円
延長登記 3,000円 3,000円
抹消登記 1,000円 1,000円

登録免許税、延長登記、抹消登記に関わる内容でそれぞれ発行費用が発生します。た、債権譲渡登記と動産譲渡登記では、それぞれ手数料に若干差異があります。債権譲渡登記は、債権個数によって手数料が変動します。 

債権譲渡登記・動産譲渡登記の確認方法

債権譲渡登記・動産譲渡登記は公示を目的としていないため、当事者以外は詳細な情報を確認することができません。第三債務者に知られずに債権譲渡を行える点は、債務者にとっては大きなメリットですが、注意が必要です。

債権譲渡登記・動産譲渡登記の証明書は、以下の3種類があり、上のものほど詳細に事項が記載されています。

証明書 内容 請求できる人 請求先
登記事項証明書 詳細な債権譲渡登記・動産譲渡登記の内容 当事者のみ 東京法務局民事行政部債権登録課/動産登録課
登記事項概要証明書 大まかな債権譲渡登記・動産譲渡登記の内容 すべての人 東京法務局民事行政部債権登録課/動産登録課
概要記録事項証明書 その会社(法人)が譲渡人となった債権譲渡登記・動産譲渡登記の有無 すべての人 全国の法務局

登記事項証明書は、詳細な債権譲渡登記・動産譲渡登記の内容が確認できます。東京法務局民事行政部債権登録課/動産登録課に対してのみ請求でき、当事者に限り証明書の請求が可能です。なお、登記事項証明書には、一括証明と個別事項証明があります。債権譲渡登記に関しては、一括証明では個別事項証明事項の一部が省略されて交付されます。

登記事項概要証明書は、大まかな債権譲渡登記・動産譲渡登記の内容がわかります。東京法務局民事行政部債権登録課/動産登録課に対してのみ請求でき、誰でも証明書の請求が可能です。

概要記録事項証明書は、その会社(法人)が譲渡人となった債権譲渡登記・動産譲渡登記の有無がわかります。全国の法務局で証明書が請求でき、すべての人が確認可能です。また、民事法務協会の「登記情報提供サービス」でも確認できます。 

債権譲渡登記・動産譲渡登記の取得・閲覧方法

債権譲渡登記が行われている場合には、上記の証明書を取得することによって、債権譲渡登記・動産譲渡登記を確認・閲覧することができます。ここからは、取得方法や閲覧方法について説明します。

各証明書の取得方法

各証明書の取得方法は、下記の通りです。ここからはそれぞれの取得方法を解説します。

  • ・窓口申請 
  • ・郵送申請 
  • ・オンライン申請

東京法務局での窓口申請では、必要書類と本人確認ができる書類などを用意し、証明書の発行が可能です。郵送申請やオンライン申請も同様で、申請書様式がテンプレートで用意されているため、様式に則って記載しましょう。

郵送での申請は必要書類だけでなく、郵送切手を貼り付けた返信用封筒も添付してください。

また、窓口申請、オンライン申請は時間が定められているため注意が必要です。窓口は平日の8:3017:15、オンラインは平日の8:3021:00が受付時間となっています。

「登記情報を閲覧したい」など、証明書を発行する必要がない場合は「登記情報提供サービス」から閲覧することができます。平日8:3023:00、土日祝日8:3018:00の時間帯で閲覧が可能です。下記の記事で詳細を記載しているため、詳細をご覧ください。 

証明書の取得・閲覧にかかる手数料

ここからは、証明書の取得にかかる手数料について紹介します。

窓口での交付、郵送による交付、「登記・供託オンライン申請システム」での交付の3種類がありますが、各種料金が異なります。オンラインでは、窓口や郵送よりも安い手数料で交付が可能です。

<窓口申請で郵送での交付>

証明書 債権譲渡登記 動産譲渡登記
登記事項証明書  500円  800円
登記事項概要証明書  300円  500円
概要記録事項証明書  300円  300円

<オンライン申請で郵送での交付>

証明書 債権譲渡登記 動産譲渡登記
登記事項証明書 500円 750円
登記事項概要証明書 300円 450円
概要記録事項証明書 270円 270円

<オンライン申請でオンラインまたは窓口での交付>

証明書 債権譲渡登記 動産譲渡登記
登記事項証明書 450円 700円
登記事項概要証明書 250円 400円
概要記録事項証明書 250円 250円

与信管理の際に見極めるためのポイント

「与信調査」とは、相手企業の営業や資金繰りの状況、企業概要、業界での評判、反社会勢力との繋がりがないかどなどから、取引先が信用できるかどうかといった調査です。さらにこれらの調査に加えて「取引先とはいくらまで取引額を増やしても大丈夫か」という判断をすることを「与信管理」といいます。

与信調査、与信管理に関するより詳細な情報は下記をご覧ください。

まとめ

今回は、債権譲渡登記、動産登記の内容や必要な手数料、申請の方法についてまとめました。

一般的によく知られている不動産登記などとは違いもありますが、権利や義務を保護し、公に記録するためのものであるところは同じです。申請の際には、申請方法によって手数料が異なることや、窓口の受付時間帯などに注意しましょう。