資金繰りが立ち行かなくなったときに選択する倒産。破産と倒産の違いを踏まえて、破産のメリット・デメリットや流れなどについて解説します。
破産は、業績悪化や手形の不渡りなどで資金繰りが苦しくなり、会社を継続的に経営していくのが難しくなった場合に行います。ほかにも倒産という言葉がありますが、双方には違いがあることをご存じでしょうか。
ここでは、混同しがちな破産と倒産の違いを踏まえて、破産のメリット・デメリットや流れなどについて解説します。
目次
破産とは?
破産とは、債務超過や支払い不能に陥った場合に、裁判所に申し立てることによって債務を整理する手段です。
破産手続きを行うと、裁判所が選任した破産管財人が資産を整理し、債権者に分配します。会社に残っている資産は、このときすべて手放さなくてはなりません。最終的に会社は消滅し、それに伴って負債も清算されます。
破産と似た倒産、廃業
破産と似た意味合いの言葉に、倒産と廃業があります。それぞれの意味について確認しておきましょう。
・倒産
破産が法的な手続きであるのに対し、倒産に法的な定義はありません。債務の支払いが不可能で、経営を続けることが困難な状態を指す言葉として使われています。
・廃業
経営者の高齢化や後継者不足などを理由に、個人事業主や経営者がみずから事業をたたみ、経営を終了することです。事業停止が自主的である点が破産との大きな違いです。
代表的な破産例
評判の良かった会社や歴史ある会社でも、破産することがあります。これまでにあった企業の破産事例から、代表的なものをいくつかご紹介します。
株式会社てるみくらぶ
株式会社てるみくらぶは、自社サイトを通じて格安海外ツアーを企画・販売していました。
航空会社のキックバックを収益の軸とし、低価格をウリに多くのリピーターを持っていましたが、資金繰りの悪化で2017年に破産申請。負債総額は151億円に上り、リーマンショック以降の旅行業では、最大といわれています。
株式会社昭和
「チタンの昭和」として知られていた株式会社昭和は、チタン加工を中心に、大型タンクや熱交換器などを製造。
技術力が高く、20以上の特許を保有していました。しかし、設備投資の借入金による資金繰りの圧迫に加え、コロナ禍で受注が減少。約17億円の負債を抱えて2021年に破産申請しました。
マイアミ製菓有限会社
マイアミ製菓有限会社は、江ノ島電鉄と共同開発した「江ノ電サブレ」で知られる洋菓子店「ラ・プラージュ・マイアミ」を運営。コロナ禍の観光客減少で事業継続が困難になり、2021年に負債総額約4億1,300万円で破産手続きを開始しました。
破産のメリット・デメリット
破産すると会社が消滅します。当然ながら、事業活動を続けることができません。破産した場合と、事業を継続して負債の返済を目指す場合を比較し、継続しても再建の見込みがなければ破産を選択しましょう。
破産のメリットは、なんといっても債務が免除され、債権者の厳しい取り立てに遭わずに済むことです。破産申請をすることで、債務者対応は弁護士に一任でき、負債をゼロにして再出発できます。
ただし、破産は会社が消滅するため、従業員を解雇しなくてはなりません。債権者にも従業員にも迷惑をかけることになり、社会的信頼を失う可能性があります。また、経営者が会社の連帯保証人になっている場合、経営者の個人破産も必要になります。金融機関からの借入れが難しいため、会社経営に再チャレンジする際にはハードルが高くなる点に注意が必要です。
破産手続きの流れ
破産をする際の手続きは、下記のような流れで進みます。
1.弁護士に相談する
破産を行う際には、まず債務整理をする最善の方法について、弁護士に相談します。
2.裁判所に申し立てをする
弁護士に相談した後は、必要書類と予納金を裁判所に納め、破産手続き開始の申し立てを行います。
3.債務者面談
裁判所では、破産の経緯や債務者の数などについて聴取が行われます。
4.破産手続き開始
裁判所が破産手続きの開始を決定したら、破産管財人が選定され、会社が保有する財産に関する権限がすべて破産管財人に移行します。
5.債権者集会
破産管財人が介入するようになってからは、だいたい3ヵ月に1回のペースで、債権者に対して破産の経緯や今後の方針の説明、現状報告を行います。
6.配当決定
負債が確定した後、破産管財人が資産を換価し、各債権者に配当します。
7.破産手続き完了
配当の完了、または破産手続きの廃止によって破産手続きは終了です。
破産によって法人が消滅し、経営者は債務から解放されます。債権者は取り立てを行うことができません。
法人が消滅するため、従業員は解雇となります。ただし、経営者は従業員への未払いの賃金・退職金について支払いの義務があります。支払いが難しければ、「未払賃金立替払制度」などを活用して対応しましょう。
破産の兆候を察知し、正しい取引判断を
破産は、経済的に苦しい債権者の債務を免除して、立ち直りを助ける制度です。そのため、取引していた企業が突然破産した場合、債務者が保有している財産があれば換価されて配当が見込めるものの、満額の返済は望めないのが現実です。
こうした理不尽な状況に陥らないよう、平時から取引先の情報に気を配り、リスクに応じて取引条件の見直しや債権保全の対策を行いましょう。
「アラームボックス」は、人力で継続的にチェックするのが難しい取引先の風評や支払い遅延など、倒産の前兆になる情報を収集して提供するサービスです。早めのリスク察知で、経営へのダメージを未然に防いでください。