決算書・財務分析とは – 経営者・取締役のための与信管理(決算書・財務分析編)

こんにちは。アラームボックス取締役審査部長の高見です。

今回は、与信管理の伝統的な手法である「決算書・財務分析」についてです。取引先の信用度を決算書や財務諸表を通じて分析することを目的として、そのために必要な分析指標に絞って説明していきます。また、決算書や財務諸表による分析の限界と課題についても触れていきます。

このシリーズ「経営者・取締役のための与信管理」では、マネジメント層の方を対象に、経営判断する上で欠かせない基本的な与信管理の知識から、実際に起こりうるイレギュラーなケースへの注意事項や対処方法など、経営と実務の経験者の観点からお伝えします。

決算書分析・財務分析とは

企業の経営者や取締役であれば、必ず見たことがある決算書や財務諸表の分析方法を解説していきます。

決算書分析・財務分析の成り立ちとその分類

決算書・財務分析の歴史は古く、1960年代のアメリカが発祥とされます。企業の優劣は利益の量だけでなく質も考慮すべしとして発展してきました。決算書・財務分析は、分析を行う立場の違いにより外部分析と内部分析に分類されます。外部分析は株主や金融機関など経営当事者以外の立場から分析を行うものです。一方の内部分析は企業の経営者など当事者の立場から分析を行うもので、管理会計とも呼ばれます。

与信管理に必要な信用分析

さて、私たちの興味は与信管理にあり、率直にいえば取引先からの代金回収の確実性を知りたいわけです。そのためには前述の外部分析が使えそうです。外部分析は、その目的別に信用分析と投資分析に分かれます。事実、信用分析は企業の債務支払い能力=代金回収の確実性を調べるための分析とされます。売掛金の与信管理のほか、融資資金回収の確実性に興味がある金融機関や、社債償還の確実性を知りたい投資家なども利用するオーソドックスな分析手法です。なお、投資分析については、企業の成長性、収益性などの投資価値を調べるための分析で、企業の株式を購入する投資家などが利用しています。

決算書・財務分析の分析手法と5つの指標

決算書・財務分析はいわゆる計算書類(貸借対照表、損益計算書など)をもとに、実数分析や比率分析を行います。

  • 実数分析とは、自己資本や経常利益といった各指標の数値を前年数値または他社の数値等と比較する分析手法
  • 比率分析とは、自己資本比率や経常利益率といった構成比率や相互比率等を通じて行う分析手法

これらの手法を駆使しながら、5つの側面(収益性、成長性、安全性、効率性、生産性)から算出した数値をもとに、企業の債務支払い能力を評価していくことになります。「決算書・財務分析」と聞くと難しいイメージを抱く方も多いと思いますが、その手法は確立されており、それぞれの数値を算出することは、それほど難しくありません。数値の算出は、決まった式にあてはめていけばいいのですから。

出てきた数値をどのように判断するかは、決算書・財務分析の肝であり、決算書・財務分析の難しいところだといえるでしょう。同業種の企業と数値を比較してみたり、過去からの推移をみたり、分析における腕の見せ所です。

次から、決算書・財務分析における指標のうち、与信管理に重要な「収益性」「安全性」について説明をしていきます。

収益性を示す指標

まずは、5つの側面のうち、「収益性」にスポットをあてて説明していきます。

収益性分析が重要な理由

企業が存続するためには利益を上げる必要があります。売上高が大きくても利益が小さい会社ましてや赤字では、早晩会社は潰れてしまいます。したがって、売上と費用(=売上-利益)のバランスを確認することが必要で、そのため収益性分析は重要です。

総資産利益率(ROA)

収益性を確認する代表的な指標として総資産利益率(ROA)を見てみましょう。企業が総資産(=資本+負債)を利用してどれだけの利益を上げたかを測るものが総資産利益率です。総資産利益率=売上高利益率×総資本回転率と分解して、説明していきます。

売上高利益率とは

売上高利益率(=利益÷売上高)とは、売上に対する利益の割合のことですから、この指標が高いほど収益性が高いことがわかります。総利益、営業利益、経常利益等に応じてそれぞれの利益毎に売上高利益率は計算されます。

総資本回転率とは

一方、総資本回転率とは、前述の総資産に対する売上の比率で、これが高いほど収益性が高いと判断できます。同じ売上高を上げるのに必要な資金が少ないほど効率的に利益が上がる企業だということです。ただ、総資産が資本+負債だったことを思い出してください。総資産利益率が高くても資産の構成が借り入れに偏っていると高い利益率を維持することが難しそうです。そこが安全性の分析が必要となってくる理由です。

安全性を示す指標

続いては、5つの側面のうち、「安全性」にスポットをあてて説明していきます。

流動比率とは

企業の安全性は資本と負債のバランスを比較することにより分析することになります。資本よりも負債の方が大きいという会社は安全性が低いと言えます。とくに企業の債務支払い能力では流動比率という短期的な安全性が問題です。流動比率は流動資産額÷流動負債額により求めます。流動資産は1年以内に現金化できる資産(売掛金など)で、流動負債は1年以内に支払わなければならない負債(買掛金など)です。

したがって、流動負債額<流動資産額だと流動比率が100%を超え、短期的な支払能力があると判断できます。これに対して流動負債>流動資産額だと、短期的な支払能力に問題があるということになります。

決算書・財務分析を始めるにあたって

精度を高めるためにすべきこと

決算書は、営業状況や資金状況などを反映しており、分析し、その情報を蓄積していくことで倒産する傾向が高いのか、低いのかを判断する一つの材料となります。ここで重要なのが「蓄積」です。決算書も年1回作成される過去情報です。ですから、決算書や財務諸表を分析し、その指標で出てきた結果で将来を予測することになります。業界ごと会社ごとにその特徴が異なり、実際にその企業からの代金回収を確実に行えるかどうかは、これまで蓄積したデータとの比較や分析者の経験がものをいいます。経験豊富な分析者が、様々な企業の分析結果を実際の代金回収状況と比較してこそ、予測が可能になります。

決算書や財務諸表の入手方法

決算書や財務諸表は、上場企業であれば公開されているため、対象企業のホームページやEDINET、会社四季報などで容易に入手できます。一方で企業数の大半を占める中小企業などの非上場企業については、入手することが一気に難しくなります。掛売りで取引を始める際や、掛取引の金額を増加する際などに、取引先に決算書や財務諸表の提出を打診して、承諾を得る必要がありますが、取引先は「お客様」であるため、提出を求めるのは容易ではありません。

また、民間の調査会社では、企業情報や評価とは別に決算書や財務諸表の提供も行っています。しかし、当然ながら調査会社が決算書や財務諸表を取得できている企業分のみに限られ、その割合は日本全体の企業数の1〜2割程度しかないともいわれています。このように、決算書や財務諸表を入手することは、非常に困難を伴う場合が多く、もしも入手ができた場合には貴重な情報となります。

決算書・財務分析の課題と注意事項

この記事は、「経営者・取締役のための与信管理」のタイトルどおり、マネジメント層の方を対象としているため、現実に起こりうる少し突っ込んだ話もしておきます。

「過去の情報」であるという点に注意

決算書・財務分析は長い歴史の中でその手法が確立されていますが、欠点のひとつは「決算期は年に1度である点」です。上場会社等では四半期決算の必要があるからその期間は短縮されます。しかし、企業の多数を占める中堅中小クラスの企業において決算情報は年に1回です。決算書・財務分析のみでは、最悪1年近く前の情報で、取引先の債務支払い能力を評価しなければならないので注意が必要です。

「当事者が作成」している点に注意

みなさんも「粉飾決算」という言葉を聞いたことがあると思います。例えば、銀行から融資を受けるために、また主要取引先から取引を打ち切られないために、決算書や財務諸表の数値を実態よりも良くみせかけるように改ざんするのが粉飾決算です。入手した決算書や財務諸表が粉飾決算だと気付かずに分析をしてしまえば、取引先の債務支払い能力を誤って評価してしまいます。決算書や財務諸表は、調査したい対象である取引先自身が作成していることを忘れてはいけません。

少し心配になったかもしれませんが、与信管理では決算書・財務分析を定量分析と呼ぶのに対して、定性分析という手法もあります。定性分析は定量分析と並び、与信管理に欠かせない分析手法です。リアルタイムに発生する数値で表せない定性的な情報を元に判断します。定性分析については、また別の記事で紹介します。

アラームボックスからお知らせとお願い

さいごまでお読みいただきまして、ありがとうございました。少しだけお知らせとお願いです。

「与信管理サービスで現状の課題を解決したい方」へ

当社では、オンラインデータを活用した企業調査サービス「アラームボックス」や、売掛金の保証サービス「セキュアボックス」の運営を通じて、企業調査や審査、与信管理手法の向上に努めています。ご興味あれば、お気軽にご利用またはお問い合わせください。

今回の関連記事およびシェアのお願い

今回の記事は「決算書・財務分析」をテーマにしました。関連する記事として「与信管理のトリセツ」や「売掛金回収・未回収の分かれ道」もおすすめですのでご覧ください。今回の記事が気に入った方は、友人知人へシェアや紹介をお願いします。

では、また別の記事でお会いしましょう。

190円で取引先の動向を常にチェック

販売先や仕入先の定期的な情報収集から、潜在顧客や新規案件の調査まで、管理部門から営業担当者まで、知識に関わらず利用できます。今なら「無料」で試せます。