与信審査とは?代表者の風評や決算書分析で与信審査力を高める

与信審査とは

与信管理の中でも、与信審査はミスが許されない業務です。与信審査で誤った判断をしてしまうと、取引先の倒産によって損害を被ったり、逆に将来の取引拡大の機会を失ってしまうこともあるので、しっかりと与信審査業務の基本をおさえておきましょう。

与信審査とは

まず最初に、そもそも「与信審査とは何か」について簡単に説明していきます。

与信審査とは?与信審査の意味は?

与信審査とは、取引先企業の情報を調べて、取引の可否や金額を判断することです。審査というと難しそうですが、簡単に言えば取引相手を信用して取引をするか?しないか?を判断することです。掛取引をすると判断したとして、金額や商品がいくらでもよいわけではありません。金額○○○円までは取引可、商品○○セットまでは取引可というように上限を決める必要があります。この上限のことを与信限度額与信枠といい、取引先企業ごとに与信限度額や与信枠を設定していきます。

与信審査の目的

与信審査は掛売りが初めての取引先に対して必ず行います。相手を信用(与信)して商品を販売するということは、代金の回収も後になります。みなさんも個人同士で全く知らない人にお金を貸したりはしないですよね。企業取引や法人取引でも同じです。

与信審査はまず「相手を知る」ところから始まります。取引先企業の内容を把握し、信用できるかどうか、いくらまで支払能力があるかを判断していきます。とはいえ初めての取引申込であれば大切な新規のお客様でもありますから知らないといって厳しくしすぎてもいけません。リスクを抑えすぎてもダメなのが、与信審査の難しいところです。与信管理の目的は「企業の売上・利益の最大化」ですから、与信審査についても同様な考えをもって柔軟に行うべきでしょう。

与信審査の2つの分析手法「定性分析」

企業情報の中には、単純に数値では表すことのできない情報も多くあります。代表者の資質、企業の経営姿勢、販売力、外部・内部からの風評など様々なものがあり、これらの情報を「定性情報」といいます。

定量分析だけでなく定性分析を行うことでより詳細な分析を行うことができます。営業の現場などでは、決算書の徴求ができるとは限らないですし、中小企業になると信用調査会社を利用しても情報がないケースも出てきます。与信審査を行う中で、近年重要視されるのが決算書を使った分析以外の定性分析なのです。

代表的なものを以下3点説明します。

代表者の分析

代表者の資質を与信判断するにあたって、一番良いのは面談をすることです。面談をすることが可能であれば、人柄、性格、経営姿勢などを判断できます。特に経理や財務の理解度の有無は重要になります。経理、財務、管理責任者が不在で、代表者が数字に弱い企業や代表者個人が不相応に派手な生活をしていたりする企業は業績が好調のときはよいのですが、業績が悪くなると一気に資金繰りショートし破綻するケースが見られるため注意が必要です。

実際には商取引にあたり代表者と面談する機会がないほうが多いと思われます。その場合はインターネットや取引先からのヒアリングなどで代表者の情報を調べましょう。交友関係、個人資産状況、反社との繋がりがないかなどをチェックすることも重要です。取引相手が大企業でなく中小企業などのオーナー企業である場合、代表者の調査は与信審査に必要なプロセスとなります。

株主・背景

取引先の全てがオーナー企業とは限りません。代表者の分析に続き、株主や会社設立の背景についても調査しましょう。取引先に親会社がいる場合は、親会社の業績、親会社の代表者についても調査をしましょう。

取引先が赤字でも親会社がしっかりしていれば支援体制があると考えられるため与信審査にプラスですし、逆に取引先が黒字でも親会社の業績が悪ければ、与信限度額や与信枠を設定する際にマイナスの影響を受けることが考えられます。役員構成などを会社登記簿謄本で確認することで親会社との関係性なども把握できるでしょう。

企業の風評

企業の風評には良い風評、悪い風評がありますが、特に与信審査上、悪い風評には注意が必要です。昨今ではインターネットによる風評の拡散からニュースなどに繋がり、訴訟、行政処分、店舗閉鎖、取引停止等へと発展し、最終的に企業倒産してしまう事例が増えてきています。

風評が起きる要因は内部からだと従業員の不満、退職、不正発覚等、外部からだと支払遅延、不当販売等、小さなものから大きなものまで潜んでいます。そのような企業の風評情報を入手した際には適宜、与信限度額や与信枠の見直しが必要です。リアルタイムな情報を得るためにもインターネットや業界内からの定期的な風評等の企業情報収集は必須と言えるでしょう。

商流の分析

相手の取引先だけでなく、商取引の一連の流れ(商流)についても問題点がないか分析が必要です。商品の仕入れ先、販売から納品までの期間、納品場所、決済方法、商慣習と著しく相違がないかなどについても確認が必要です。実際の業務フローの中で、与信審査のチェックポイントとして、以下3点を見ていきましょう。

取引の経緯と動機

先ずは取引開始の経緯、取引の動機に懸念がないかをチェックします。営業マンによる申込獲得の場合は営業マンに商談の流れを確認するとよいでしょう。取引先からのいきなりの申込の場合、企業サイトを見ての申込か、広告によるものか、紹介によるものか等確認をしておきましょう。

また、今回の申込が取引先企業にとってどのように活用されるのか購入動機も注意です。取引商品にもよりますが、取込詐欺を仕掛けてくる悪い相手も中にはいますので、嬉しい商談でも与信審査を行う立場では慎重に見ることが大事になります。

販売~納品まで

上記で説明した購入動機から、取引先企業より納品時期や納品場所などを確認します。商取引の内容にもよりますが、仕入れとして購入し店舗で販売するのか、自社で利用するのかによって納品場所も異なってきます。

納品場所が適正かどうかとの確認と合わせて、仕入れとして購入している場合は店舗数や販売先の規模から判断して、数量が適当か?自社で利用する場合は企業規模に見合っているか?を確認します。購入にあたり、相手がやけに急いでいる場合ほど、与信審査の業務自体はしっかり行ったうえで、速やかな対応を心がけましょう。

決済条件を決める

決済条件については取引相手との力関係によって決められることも多く、思い通りにならないことも多いでしょう。また、決済条件は一度決定すると後から変更することが難しいため、最初の商談が肝心となります。例えば毎月継続取引になる決済条件が「販売月末締め翌々月末払い」とすると、月間100万円の取引の場合、現金回収までのサイトは販売当月分を含めて3ヶ月分となり、取引先に100万円×3ヶ月の300万円の与信限度額や与信枠の設定を行うことになります。

与信審査をして決済条件を決めるときは、先ずこの回収サイトが商慣習に対して妥当かどうか?また、取引先が購入した商品を更に販売する場合は、その販売先からの回収サイトも確認し、支払いに懸念がないかを確認することが大事となります。

与信審査の2つの分析手法「定量分析」

「相手を知る」ためには取引先の情報収集として、企業の調査を行わなければいけません。集めた情報をもとに分析を行っていきます。具体的な分析手法について説明していきましょう。

決算書などの数値に表せる情報を「定量情報」といいます。定量分析は与信審査のうち、主に決算書などの数値を利用した分析になります。取引先の経営状態を知るには最も有効な情報のひとつになります。金融機関であれば融資の申込時に決算書を徴求することが当たり前ですが、商取引の中では中々難しいケースも多いでしょう。最低限直近の損益計算書、貸借対照表の入手、できれば勘定科目内訳明細書の入手が望ましいところです。

官報などの公開情報や外部の企業信用調査会社を利用して入手できる場合もあります。ここでは与信審査の観点から、決算書の簡単なチェックポイントについて説明します。より詳しい分析については「決算書・財務分析とは – 経営者・取締役のための与信管理(決算書・財務分析編)」をご覧ください。

損益計算書

損益計算書は、P/Lとも呼ばれ1年間の企業の営業活動による実績数値を示す資料になります。企業がいくら稼いで、いくら費用がかかって、いくら利益が出ているかがわかるため、与信審査(与信限度額や与信枠の設定)に非常に役立ちます。利益には、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期純利益の5つの利益がありますが、企業活動の本業における利益を見るには経常利益がよいでしょう。

与信審査のポイントは、先ず経常利益がプラスになっているか?になりますが、プラスでないから取引しないという訳にもいきません。マイナスであれば、今期マイナスの要因、マイナス数値による影響、プラスに転じる可能性等を直接ヒアリングや他の指標より読み取り判断していくようにしていきましょう。

貸借対照表

貸借対照表は、B/Sとも呼ばれ企業の財政状況を示す資料になります。左側(借方)には、企業が調達した資金をどのように運用(活用)しているかを示しており、この運用が収益へと繋がります。右側(貸方)には、企業が事業活動を行うための調達状況が示されており、負債は外部からの調達、純資産は内部からの調達を示しています。

与信審査のチェックポイントとして以下3点を見ていきましょう。

  • 純資産

純資産には、主に資本金、資本準備金、利益剰余金で構成されています。この中で利益剰余金は企業が毎期計上してきた利益の積み重ねとなりますが、赤字を続けてきた企業はマイナスとなります。このマイナスを資本金、資本準備金等で補えないと純資産の部全体がマイナスとなり、債務超過の状態となります。債務超過になると一般的に金融機関の調達は困難となり、取引先からも取引停止となる可能性が高くなるため企業の継続自体が危ぶまれます。与信審査の大原則として、債務超過企業との取引判断は十分な注意が必要です。

  • 流動資産

流動資産とは現預金および1年以内に現金化が可能な資産になります。

企業の支払い余力を判断する重要な指標ですが、注意点としては現金以外の項目は1年以内に現金化がされる保証がないことです。売掛金は取引先の倒産等によって貸倒が起きると現金化されないですし、商品等も実態として不良在庫になってる場合などは現金化されるとは限りません。与信審査をするうえで、確実性を図るには現預金をいくら保有しているかも重要なポイントです。

  • 流動負債

流動負債とは1年以内に支払う予定の負債になります。

買掛金、短期借入金、未払金等の項目がありますが、ここで重要な点は上記で説明した流動資産とのバランスになります。1年以内に支払わなければいけないということは、当然その支払原資がなくてはいけません。流動資産が流動負債を下回っているようだと資金繰りが懸念される状況となりますので、与信審査をするうえで注意が必要でしょう。

勘定科目内訳明細書

勘定科目内訳明細書とは損益計算書、貸借対照表の勘定科目の内訳を示す書類です。ここまでを取引時に徴求できると、取引先企業の内容が相当把握できると思います。

各勘定科目の内訳となると項目も多いので、与信審査上で見るべきポイントを3点説明します。

  • 売掛金、買掛金

売掛金、買掛金の項目には、金額と取引先企業名が記載されています。金額の大小により主要取引先企業がどちらかが確認できます。主要取引先が大手企業であればそれなりの信用力があると判断できますし、聞いたことのない企業やグループ企業が多ければ、その取引先についても与信調査したほうがよいでしょう。

  • 短期借入金、長期借入金

短期借入金、長期借入金の項目には、調達先が記載されています。金融機関であればメインバンクの確認ができます。また、借入額によって信用度を図ることができます。借入先が代表者自身、ノンバンク、第三者や取引先の場合は金融機関からの新たな資金調達が難しい可能性がありますので、与信審査をするうえで注意が必要です。

  • 固定資産(土地、建物)

固定資産の項目には、企業が所有している資産の内訳が記載されており、土地、建物になると住所が記載されています。住所が確認できることで、その土地、建物をさらに調べることができます。必要に応じて不動産登記簿謄本を取得して担保余力状況を確認するのも有効でしょう。担保に余力がある場合は、与信審査の判断材料としてプラス評価できます。

アラームボックスからお知らせ

アラームボックス与信管理

ここまで、与信審査において基本となる各種分析を行ってきました。次回はいよいよ「与信限度額と与信枠の設定」を行います。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。少しだけお知らせです。

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